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「ハエ釣ってます?」

家の休みのレジャーと言えば“魚を捕る”事である。川では鮎も取るがハエという魚も取る。
鮎を取っている時にも網に入るが夏の時期には美味しくなく、取れても逃がしてしまう。
そのハエが冬になると美味しくなるのでそれを今度は、竿で釣る。
冬のハエを寒バエと言い、その釣り方は2種類あって一つは毛鉤を川に流してハエを釣る方法で、膝下まだ川に入って上流から毛鉤を投入して下流まで流す。
何故か殆どの場合下流でハエが掛かる。
毛鉤には返しが付いておらず、竿を上げてハエが振り子のように近づいた時、腰に付けた大きな竹かごに一発で入れないと針が外れてハエが逃げてしまう。
私は、それが下手で釣れてもよく逃がした。
釣り自体は面白いが秋の深まった時期から釣りをするので寒くて寒くてつらい。
寒い思いをしてもハエは、鮎ほど美味しくないので私はハエ釣りはそれほど好きではない。

もう一つの釣り方は、ウジを餌にちょっと深めの川で浮き釣りをする。
これはひたすら待つだけで浮きを見つめ沈むのを待つだけ。
これも結局寒い。
釣れたハエは大体焼いて食べていたが家では、醤油にごま油を垂らし、ねぎを入れたタレで食べる。
寒バエはその頃は小さく7~8cmぐらいで身だけ食べるだけならほとんど食べる所がない。
なので骨ごと食べるがその骨も硬く、味も少し臭みがある。
ごま油やねぎを薬味に入れて食べるのはその臭みを消す為だ。
今思うと友達から
「ハエ釣りに行った」
と聞いたりテレビでハエ釣り番組など見た事がない。
夏の時期になると鮎の友釣りのニュースや鮎料理などもよく見るが、ハエ料理など一回も見た事がない。
もしかして貧乏臭い父が一般的には食べないハエを無理やり食べていたという事も考えられるが、冬の時期に川原で同じように竿で釣りをしている人を見掛けたのでまったくのマイナーな釣りでもないと思うのだが・・・
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「思えば家族のレジャーは、魚関係」

家の休みのレジャーと言えば“魚を捕る”事だった。
川では鮎を捕る。
父が投網を投げて姉と私が鮎を捕まえるのだ。
知らない人もいるだろうが、網を投げて網を引いて鮎が網に絡み付いて捕まえると思っている方がいらっしゃると思うが殆どの鮎は、石の隙間に隠れて危機が去るまで待っている。
それを私達が水中眼鏡で隠れている鮎を探し、サタンが持っていそうな三叉になった槍の先の様な道具で刺して捕まえる。
鮎が逃げようと網に絡まった鮎は、父が網から外して捕まえるのだが少なくとも3割はツルンと手が滑り逃げられる。

鮎を取るのも漁業権?が必要で許可証を買わなければならない。
買えばそのシーズン?は鮎を取って良いという事になる。
幼い時は許可証がいるという事は知らなかったが父は、お金が勿体無いとその許可証を取らなくなった。
最上級な言い方をすれば密猟だ。
2つ前に書いたサザエをくれた人も厳密には密猟になると思うが、昔は結構自由で段々と何処の海岸でも“○○を許可なく取ってはいけません!”と立て看板を立てて厳しくなっていった。
時期としては同じ頃だが鮎は既にそういう許可制だった。
それは、鮎の稚魚をお金を掛けて放流しているのでそういう仕組みなのだろうが、父は親戚に許可証を貸してもらい投網を打ちに行く様になった。
もちろん車の運転免許を
「車乗るから貸して」
と言って借りるのと同じ様にそんな手段は通らないが河川の管理者を納得させる効果はあるだろう。

鮎を取るのは許可証が必要と知ってから父が鮎を取りに行こうと言い出したら
「許可証は?」
と私は気にするようになったが父は、段々と親戚に借りに行くのも面倒になりまったくのノーガードで鮎を取りに行く事が多くなった。
真面目な私は川の土手に車が止まると監視員が来たのかとビクビクしながら鮎を取っていた。
本当に監視員と言う人が実際に回っているのかどうかも知らないが、私が捕まるというより父が捕まるんじゃないかと心配していた。
もう30年以上前の話で時効なので何の非難も受け付けないが父は、魚が取るのが好きというより魚を食べる事が好きな様で私は、魚を食べるより取る事が楽しくてそれをレジャーと思っていた。

「悪と思うと正当化される」

度々書いたが家の休みのレジャーと言えば大体“魚を捕る”事。
海で言えば大きく分けて堤防で浮き釣りか浜辺で投げ釣り。
堤防の浮き釣りは、撒き餌を撒いて浅い場所で泳いでいる一般的には誰も狙わない様な小さい魚を釣る。
普通ならリリースする魚を釣り、それをから揚げで丸ごと揚げて食べる。
父は、変わり者なので他の釣り客に見られると怒られる様な小さい魚でも持って帰る。
貧乏臭い釣りなのだが子供にとっては非常に楽しい。
通常、底の方の大きい魚を狙うのが普通だが、その場合浮きが沈むのをずっと待つだけ。
浅い場所では魚が餌をつつく所が良く見えて釣り堀以上に楽しい。

浜辺での投げ釣りは、魚が釣れるより投げる方が楽しい。
浮き釣りと違い重いオモリを付けて海底に居るキスを中心に狙うのだ。
私は、ドンクサイので指を離すタイミングが悪く度々オモリだけが切れて飛んでいくので余り投げさせて貰えなかった。
父は、フグが釣れると浜辺に捨てていた。
外道中の外道で毒がある小さいフグをケチな父も流石に調理して食べようとは言わなかった。
図らずも釣れると海に返す事なく浜辺に投げて捨てるのだ。
子供ながらに
“これは良いのか?”
と命の事を思うのと同時に
“テレビで高値で初せりをしているふぐでは?リリースして大きくなるのを待った方がいいのでは?”
と資源の事を考えていた(トラフグとは別の種類のフグかもしれないが)
ふぐは確かに厄介で、魚が掛かったと上げてみて針がへし折れているのは主にフグが針ごと噛み切って逃げているという事で父は、そのリスクを減らす為に殺生をしているのだった。
私も心にモヤモヤした物を感じながら砂浜に投げたり、波打ち際ギリギリに投げて彼に少しのチャンスを上げたりしていた。

ある時、リールを巻き上げるとキスではなくフグが上がった。
フグは、針を奥の方まで飲み込む事が多く針を外すのもしんどい。
やっとの事で針を外すとどうなったか良く分らないが私の指先に噛み付いた。
そんなに大きいサイズではないが第一関節までズッポリと咥えている。
あの針をへし折るフグがだ。
その時、周りに私しかいなかったと思うが
「いたたたたた!!」
とその場で足踏みをしていた。
ふと“海に浸すと放すのでは?”
と思い手を浸すと彼は噛むのを止め、海に帰って行った。
まんまと彼は命拾いしたのだった。
それからである。
私は、フグが釣れると何の躊躇もなくフグを浜辺に捨てる様になったのは。
原爆を落として正しいんだと思う気持ちと少し似ている。

「捻くれ者」

子供の頃の夏休みは海にキャンプに行っていた。
有名な海水浴場とかではなく、知る人ぞ知るみたいな場所でキャンプをしており、昼にまあまあ居た海水浴に来ていた人も夕方になると皆帰って行きキャンプをする人の方が珍しい。
私が小さい頃は、母も来ていたが段々と釣りやキャンプなどには来なくなったが、まぁ何処の家族もそんな感じなのだろうと思う。
小学生ぐらいになると父と姉と私の3人でキャンプをする訳だが、やる事と言えば海で泳ぐか釣りをするか夜に花火をするぐらい。

ある日、珍しく他にキャンプをする男性グループがいて広い砂浜なので50m以上離れた場所に自分のテントを張っていた。
その場所から海で捕ったというサザエを持って
「捕り過ぎたから良かったらどうぞ」
と大量のサザエをくれた。
父はサザエを好きで私が
「優しい人じゃね」
と言う父が
「女がおらんかどうか見に来たんだろう」
と言っていた。
姉も女性では、あるがまだ小学生なので男性から見れば親子連れの家族にしか見えない筈だが父に言わせると
“軟派をしに偵察に来た”
と思っている様だった。
子供の私達はサザエをそんなに好きではないので殆どのサザエを父一人で食べた訳だが、父は感謝というより
“サザエは軟派のきっかけに過ぎない”
と思っている。

私も変わり者だが父も変わり者で捻くれている。
歳を取り、日頃から母に対してゴニョゴニョと可愛げのない事を言っていたが、例の母の入院で一番母を心配し、夜も眠れないらしく、母も入院で痩せたが父もゲッソリと痩せたらしい。
そんな事なら普段から母に優しくすればいいと思うのだが、子供には分らない絆があるのだろう。

「私の精神力では絶対出来ない仕事」

母は退院し、姉が田舎から車で迎えに来て帰って行きました。
当初、インターンの先生から
「大分、良くなっていますよ。この分ならあと一週間ぐらいで退院出来ますよ」
という話を母から伝え聞いていた。
主治医の先生ではないので話半分で聞いていたが、1ヶ月の検査入院と入院前から聞いていたので
“丁度、1ヶ月ぐらいか”
と私は思っていたが、結局1ヶ月と2週間近く入院していた。
しかしこのインターンの先生を
「いい加減な事を言いやがって!」
と責める気持ちはない。
患者を安心させようと状態がいい事を伝えたいという優しい心根の先生なのだろう。
会った事ないけど。
しかし主治医の先生は、何となくの予想じみた展望を言わない。
それは、無駄に希望を持せるというか退院が伸びた事による本人の落胆という物も考えているのだと思う。
どちらの方が正しいとは言い切れないが、きっとインターンの先生も確定した情報しか伝えない様に変わっていくのだと思う。

仕事をするという事は、多かれ少なかれ人の命を預かっている。
命に関係ない仕事の様に見えて実は全て関係していると言って良い。
例えばお弁当屋のおばちゃんでも食中毒でも出せば子供、老人の方は特に危ない訳で辿っていけば人が死ぬかもしれないという事に辿り着く。
私は以前建築会社で土木設計をしていた。
穴を掘る時には土留めの設計をしなければならない。
土留めとは穴を掘れば端の方から土が崩れてくる訳で、都会で穴を掘るという事は小さい穴で済ませなければならない。
そこで鉄の板で穴の端に壁を作り、壁が内側に崩れない様につっかえ棒をする事で穴を最小限の大きさで穴を掘る事が出来る。
その強度計算を間違えれば一気に壁が崩れて中で作業している人が亡くなる可能性もある訳で弁当屋さんよりは、死に関連していると言えるかもしれない。
どっちが人の命に直結しているとランクを付ける事もナンセンスではあるが医者という職業は、間違いなく人の命に大きく関わっている。
インターンの先生も色々と経験して確定した情報しか言わなくなるのだろうなと思う。
人間的には安心させる為に安易な希望的観測を言う方が好きだが
「大丈夫」
と言っていた方が亡くなってしまったとか、そういう経験をすればきっと変わってくるだろう。
想像するだけで私には絶対出来ない大変な仕事ではある。

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